大阪高等裁判所 昭和44年(う)429号 判決 1969年9月22日
本店所在地
大阪市南区西櫓町三番地
株式会社 楽天軒本店
右代表者
藤田義一
右の者に対する法人税法違反被告事件について、昭和四四年二月二四日大阪地方裁判所が言い渡した判決に対し、原審弁護人鍋島友三郎から控訴の申立があつたので、当裁判所は次のとおり判決する。
検察官 上西一二 出席
主文
本件控訴を棄却する。
理由
本件控訴の趣意は、弁護人鍋島友三郎の作成にかかる控訴趣意書に記載されているとおりであるから、これを引用する。
論旨は、量刑不当を主張するが、訴訟記録および関係各証拠に徴すれば、本件は、原判示のとおり、売上の除外、架空経費の計上等の不正手段により、三事業年度にわたつて所得金額を偽つて申告し、合計二、四八五万余円に上る法人税を逋脱したものであつて、所論の諸事情を斟酌しても、原判決の罰金額が不当に過重であるとは考えられないから、論旨は理由がない。
よつて、刑訴法三九六条により本件控訴を棄却すべきものとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 神保修蔵 裁判官 西川潔 裁判官 金山丈一)
控訴趣意書
被告人 株式会社楽天軒本店
代表者 藤田義一
右の者に対する御庁昭和四四年(う)第四二九号法人税法違反被告事件について次のとおり控訴の趣意を弁明いたします。
一、原判決は公訴事実どおりの事実認定をなし被告人に対し罰金四百五拾万円也を言渡しましたがこれは次の理由から刑の量定が著るしく重きに矢し不当でありますので破棄を免れません。
二、被告人の司法警察職員に対する供述調書ならびに同人の原公廷における供述によりますと本件は被告人会社の会長であります藤田一二江が代表者である藤田義一の知らない間に楽天軒の売上金の中からその支店に応じて記帳をもらして売上金を低くおさえて所得の申告をしていたものでありまして代表者としては監督不行届の責任は充分痛感致しておりますが最高の罰金刑に処せられるほど悪質ではないと考えられるのであります。更に被告人会社は甘栗の製造販売業者の間では老舗であり業界の信用も厚くこのような法人税法に違反するような行為はしないのでありますが母親である会長の藤田一二江が店舗の改造とか孫の学資とかをつくる目的でこのような申訳ないことを仕出したのでありまして全く藤田一二江伯人の不徳からでたことであります。本来ならば所謂脱税額について重加算税、滞納利子加算などの行政上の処分のみで許されることも考えられる事件でありますが時恰も興論が税務行政の不公平を追及するという事件もありましてこのように大きく取上げられたのであります。
それ故被告人会社代表者の意思(原公廷における代表者藤田義一の供述)にもとづかない会計担当の会長藤田一二江の行為によるものでこれについては既に懲役月執行猶予年でその罪の清算を完了しているのであります。この点からも原判決の罰金四百五十万円也の判決は重いといわねばなりません。更に本件につきましては被告人会社会長藤田一二江及び代表者藤田義一も前非を悔いこのような事態を二度と起さない旨誓つておりますし国税及び地方税の支払いにつきましても納付期限にはきつちりと納付しいささかもおろそかにすることのないよう経済的に苦しいなかから誠意を尽して支払つているのであります。このような状態でありますので充分情状を御斟酌下さいますよう御願い致します。
三、以上の理由から原判決が被告人に対して罰金四百五十万円也を言渡したことは刑の量定重きに失し不当でありますから破棄を求めるため本件控訴の趣意弁明に及んだ次第であります。
昭和四四年四月一七日
弁護人 鍋島友三郎
大阪高等裁判所第二刑事部 御中